
PROFILE
- 第13回 大阪成蹊芸術優秀賞(銀賞)、第12回 入選(佳作)
- 小山 りみさん
小山 りみ(こやま りみ)さん
現在の在籍学部:大阪成蹊大学 芸術学部 竞彩足球比分 マンガ?デジタルアートコース2年生
受賞名:第13回 大阪成蹊全国アート&デザインコンペティション 大阪成蹊芸術優秀賞(銀賞)
受賞作品名:『ヒミツ出港』
受賞名:第12回 大阪成蹊全国アート&デザインコンペティション 佳作(入選)
受賞作品名:『見えない子』
受賞時の在籍校:大阪商業大学高等学校3年生(第13回)?2年生(第12回)
現在、本学芸術学部のマンガ?デジタルアートコースに在籍し、第12回 大阪成蹊全国アート&デザインコンペティションでは佳作(入選)、第13回には大阪成蹊芸術優秀賞(銀賞)を受賞されました小山りみさんにお話しを伺いました。
▲第13回 大阪成蹊芸術優秀賞(銀賞)受賞作品『ヒミツ出港』
■ 受賞された作品の世界観、タイトル名の背景?理由、作品にかけた思いなどをお聞かせください。
佳作作品では「誰にも見えないものが見えてしまう孤独」と、それによって心を閉ざしてしまった少女の姿を描きました。
右上のお化けは、彼女だけに見える存在で、本当はとても怖くて助けを求めたいのに、誰にも相談できずに一人で抱え込んでいます。その孤独が長く続いた結果、少女は感情を表に出せなくなり、自分の心の声にも気づけなくなってしまいました。左上にいるもう一人の自分(本来の姿)は、怯え、助けを求めています。でもその姿さえも見えなくなっている。この状態を「見えない子」というタイトルに込めました。
自分の内側にある「怖さ」や「助けを求めたい気持ち」を誰にも見せられずにいる人が、もしかしたら周りにもいるかもしれない。この作品を通して、そんな“見えない感情”の存在に気づいてもらえたらと思い描きました。
銀賞作品『ヒミツ出港』というタイトルには、「誰にも知られず、静かに、しかし確かに旅立っていく存在」というイメージを込めました。
画面手前に描かれているカメレオン船は、森の奥深くで誰にも見つからずに存在している未知の生き物で、独り密かに目的地に向かって進み続けています。その様子がまるで“秘密の出発”のように感じ、このタイトルにしました。
背景に描かれている蛇の城も、同じ世界観を表現するために工夫した要素の一つです。「未知の生き物がいるなら、そこにはきっと未知の建物もあるはず」そんな発想から、現実には存在しない奇妙な構造の建築物を描きました。船だけでなく背景からも、この世界の不思議さや奥深さを感じ取ってもらえるように意識しました。
この作品は卒業制作であり、私にとって高校生活の集大成でもありました。また最後のコンペティション応募だったため、「今の自分にできるすべてを出し切る」覚悟で制作しました。
カメレオンをモチーフにしたのは、高校1年の細密画の課題で高評価をいただいた経験がきっかけで、描いていてやりがいがあり、自分の成長につながる存在だと感じたからです。「静かだけど力強く、自分の世界を信じて進んでいく」そんな思いを込めた一枚です。
▲第12回 佳作(入選)作品『見えない子』
■ 作品の制作期間はどれくらいですか。
佳作作品は、20時間ほどかけて制作しました。
まず、複数のラフスケッチを紙に描いて構想を練り、その中で一番しっくりきたものをデジタルに移して本制作に入りました。
銀賞作品は、卒業制作として約3か月間かけて取り組みました。
B1サイズの大きなキャンバスに描くのは初めてだったので、構図の設計や細部の描き込み、色のバランスに至るまで、ひとつひとつ丁寧に向き合いました。
■ 作品制作にあたってのポイント、工夫したところ、苦労したところなどをお聞かせください。
佳作作品では、右上に描かれているお化けの存在をただ怖いものとして描くのではなく、魚の鱗のような美しさや神秘的な雰囲気を併せ持つように工夫しました。「不気味さ」と「美しさ」の共存を目指すことで、見る人の感情にゆらぎを生むような存在にしたかったからです。
また、制作当時は美術の基礎を学んでいる最中だったため、女の子の体や椅子など、構造やバランスに違和感が出ないよう細かく調整することにとても苦労しました。全体の構成とリアルさを両立させるために、繰り返し描き直しながら完成させました。
銀賞作品では、画面内のすべてのモチーフに異なる質感を持たせることを意識しました。見ていて飽きない構図や塗り方を工夫し、どこを見ても楽しめるような画面作りをめざしました。特に主役となるカメレオン船を引き立たせるために、背景との色味や印象のバランスにもこだわりました。
また、初めてB1サイズの大きなキャンバスに取り組んだため、空間の広がりを意識しながら全体の構成を整えるのが難しかったです。さらに、背景に描いた蛇の城も初挑戦のモチーフで、スケール感や質感をリアルに表現するのにとても時間がかかりました。特にカメレオン船が主役としてしっかり目立つように、色の配置やインパクトの調整に細心の注意を払いました。
■ 受賞したときの気持ちは?
佳作に入選できたこと自体は嬉しかったのですが、正直なところ「もっと上の賞が狙えたんじゃないか」という悔しさも強く感じました。自信を持って提出した作品だったからこそ、その結果に納得しきれない気持ちもありました。
でもその悔しさが逆に、自分の中で次へのモチベーションになって、より力を入れて取り組もうという気持ちを生んでくれたと思います。
銀賞をいただけたときは、本当に嬉しかったです。
この作品は卒業制作として取り組んだもので、自分の高校生活の集大成として、全力を出し切ったという実感がありました。だからこそ、評価してもらえたことに対して誇りも感じましたし、自信にもつながりました。
一方で、あと一歩の上位賞に届かなかったという悔しさも正直ありました。でも、その両方の気持ちがあったからこそ、今後も「もっと上をめざしたい」という意欲に繋がっています。
■ 現在、大学ではどのような作品制作に取り組んでいますか。
大学では、これまで苦手だった背景表現に特に力を入れて取り組んでいます。その成果もあって、背景の授業ではカラー部門で1位を取ることができ、自信につながりました。またアナログの授業でも、自分の持ち味である細密な描き込みを活かして、良い作品をつくることができました。
私はもともと負けず嫌いな性格なので、描けないものをそのままにせず、どんな分野でも全力で挑戦しています。その一環として、1年次には絵本のコンクールに応募したり、今はワコムのコンクールへのチャレンジも予定しています。
これからも、さまざまなテーマや表現に積極的に取り組んで、自分の幅をもっと広げていきたいと思っています。
▲「背景」の授業で評価された作品
■ 受賞当時(高校生)と比べてスキル面や作風などで変化はありますか。
高校時代と比べて、スキル面でも作風の面でも大きな変化を感じています。
高校では、美術や芸術に関する幅広い分野に触れ、基礎的な描写力や構成力をしっかりと学ぶことができました。その経験が今の自分の土台になっていると感じます。
大学では、マンガ?デジタルアートコースに所属して、デジタルアートやキャラクターデザインなど、より専門的な分野を深く学ぶようになりました。デジタルソフトの使い方や、構図?色の使い方などを系統立てて学んだことで、より効率的かつ魅力的に作品を仕上げる力が身についてきました。
また、以前は「こういう世界を描きたい」と頭の中にイメージがあっても、それを表現するための技術や知識が追いつかず、思うように作品にできないことも多かったのですが、今では技術が伴ってきて、イメージを形にできる実感があります。
スキルの吸収スピードも大学に入ってから格段に上がり、描くことへの自信や喜びが増したと感じています。結果的に、自分らしい世界観もよりクリアに表現できるようになり、作品全体に奥行きが出てきたと思います。
▲「印象的な構図で見せるモノクロイラストを制作する」という課題でペンのみで描画した作品
■ 現在の制作環境についてどう思いますか。
現在通っている本学の芸術学部は、制作に集中できるとても整った環境があると感じています。設備や機材も充実している上、先生方がとても親身で、どんな質問や相談にも丁寧に対応してくださることが大きな支えになっています。
特に印象に残っているのは、イラスト制作で行き詰まった際、自分の中にイメージはあるのに、それをうまく言葉にできなかったとき、先生が私の意図を丁寧に汲み取ってくれたことです。「こういうことを描きたいんだよね」と理解してもらえたことで、表現に自信を持つことができ、また一歩前に進むことができました。技術的なサポートだけでなく、学生一人ひとりの思いや表現の背景にまで寄り添ってくれる指導があるからこそ、自分の表現を大切にしながら成長できていると実感しています。
また、周囲の学生たちのレベルも高く、お互いに刺激し合える環境なのもありがたいです。常に新しいことに挑戦できる空気があり、ここは本気で創作に向き合える場所だと思っています。
今後もこの環境を最大限に活かしながら、自分の表現をさらに深めていきたいです。
■ アート&デザインコンペティションに挑戦する高校生?中学生へのメッセージをお願いします。
コンペティションと聞くと少しハードルが高く感じるかもしれませんが、「出してみようかな」と思ったその気持ちを大切にして、まずは気軽に挑戦してみてほしいです。
私自身、これまで様々なコンクールに挑戦してきました。最初は軽い気持ちで応募していましたが、挑戦を重ねる中で「もっと描きたい」「次はこうしてみよう」と思うようになり、描くことへの意欲がどんどん強くなっていきました。このコンペに応募した時には、その経験の積み重ねがしっかりと力になっていたと感じています。
たとえ思うような結果が出なかったとしても、「次はこうしてみよう」と前向きになれる経験そのものが、自分を大きく成長させてくれます。私自身、悔しい思いをしたからこそ、「もっと描けるようになりたい」という気持ちが強くなりました。
アート&デザインコンペティションでは、過去の受賞作品と自分の作品を見比べたり、オープンキャンパスなどで先生方に相談することで、作品に対する講評やアドバイスを受けることもできます。自分の強みや改善点に気づける、貴重な機会になるはずです。
「上手く描けるか不安」という気持ちは、実は私も今でも持っています。でも、その気持ちと向き合いながら一歩を踏み出すことで、作品は確実に前に進みます。
迷っている人にも伝えたいです。「できるかどうか」よりも「やってみること」が、自分自身を大きく変えてくれます。
あなたの挑戦が、新しいスタートになりますように!
■「大阪成蹊全国アート&デザインコンペティション」特設ページはこちら
※在学生の表記は2025年8月時のものです。